黒部川最源流、源頭で『揖保乃糸』を食しました。
太郎平で望む黒部源流域の山々
『揖保乃糸』はこれまでにも北アルプス、穂高岳・岳沢や針ノ木谷で食しました。
水が豊富な場所でないと、なかなか思うように事が進まないので、近くに流水があるところというより、ピンポイントで流れのある場所限定です。
今回、あえて少し多めに持参したのは、何度かに分けて食べようとしたことにあります。
結果的に黒部川薬師沢出合いと、薬師沢、太郎平間の第一渡渉点手前の、それぞれのポイント含め、都合、三度食べましたが、前者は予行演習的、後者はダメ押し的な意味合いで、最大の目的地は二度目の黒部川の最初の一滴の滴る、黒部川最源流地点に他なりません。
もちろん、ここをターゲットポイントとしたのは同じ水流のある場所であっても、やや閉鎖的に感じる森の中より、眼前に大きな眺望を得られる開放的なところで食しようということも、その大きな要素でもあります。
一日の行程に時間の余裕を待たせるため行程が4泊5日と日程は少し長くなってしまいますが、ゆっくり、のんびり景色を見ながら食することに重点を置いたため、これも必然です。
というのは言い訳的なだけで、ファストハイクで一日で遠くまで行ったり、ガツガツ歩くことはできない歳になってしまったので、こんな目的の山行になってしまうのも致し方のないところですね。
まずは目の前に黒部川と薬師沢が囂々と流れる薬師沢小屋下の出合いで、早くも一食目としました。
プロローグの第1ラウンドは薬師沢小屋や吊り橋を見上げる薬師沢出合いで
早速に食べたのは、もちろん大きな流れがあってのことですが、いざその場において失敗しては元も子もないので、言ってみれば準備的意味合いが強く、こことて目の前を流れる水が黒部川であることを考えると何の異論もありません。
また、まだまだ上流部とはいえ、本流と薬師沢とが出合う部分という地形から川幅もそこそこの太さがあり、かなり開放的なロケーションのなか、キンキンに冷えた水で湯がき〆たそうめんを、まずは美味しくいただきました。
翌日、二日目のメインは、あくまでも高天原温泉。
チングルマ、ハクサンイチゲと雲ノ平山荘、水晶岳
温泉のさらに奥の竜晶池を含めた夢ノ平周辺の、らしからぬ特異な空間を享受したあと、我が国では最奥ともいわれる高天原温泉の野湯も堪能しました。
夢ノ平の池塘と見上げる薬師岳
赤牛岳や薬師岳稜線を見上げる夢ノ平は言うに及ばす見事な空間で、帰路に立ち寄ることにした高天原温泉は湯加減も頃合いで、夕食の時間さえ気にしなければ、もっとのんびりしたいほどでした。
高天原で見上げるアーベントロートの水晶岳
いよいよ三日目の今日は今回のハイライト、黒部川の最初の一滴を利用して『揖保乃糸』を食す日で、そのポイントは今日のルート上の岩苔小谷を登り切った岩苔乗越を南に少し下った地点となります。
岩苔小谷の源頭も黒部川の一つの支流の源頭ですが、雲ノ平をぐるりと南へ回り込みながらの流れが本流なので、上がってきた岩苔小谷の源頭部ではなく、乗越をやや南側に下った本流の源頭部で最初の一滴を目指します。
ちなみに、今上がってきた岩苔乗越は、同じ黒部川の水系にあって、わずかな距離もって南北に分ける分水嶺といえる地点で、これだけ近くにあることはかなり珍しいことだと思います。
となると乗越までの岩苔小谷の源頭でもいいのではないかとなりますが、前述のとおり、ここが決して最源流ではないことや現実にその地形、地質を目の当たりすると、そもそもそのような考えをを持たずに正解でした。
岩苔乗越近くに来て見下ろす岩苔小谷とガスの晴れない薬師岳
高山植物が咲いていないことはありませんが、そこは北側斜面であることも含め、砂礫地にかろうじて低い植物が咲く地形で、そんな雰囲気ではありません。
さらには、今日に限っては正面に見えるはずの薬師岳はガスが掛かり見えず、同じく遠望も利きません。
一方、乗越した南斜面の黒部川源頭部を見下ろせば、そこは緑にあふれていて同じ源頭部でも景観はずいぶん違います。
どこでもそうですが、基本的に北向きよりも南向きのほうが明るく感じ、開放的なんでしょうね。
正面に見えるはずの黒部五郎岳は山頂部はガスに覆われていて全容は見えませんが、それでも祖父岳へと続く稜線や眼前の風景は素晴らしいです。
登山路を少し下ると、左岸側の支沢から小さな流れが下ってくるのが確認できます。
ワリモ岳直下、細くなった黒部川最源頭部と見上げる稜線部
これまで、そのポイントはここから源流碑のある登山路の渡渉地点までの沢沿いとばかり思っていましたが、実際は違っていました。
先日の雨のせいで、この標高でも、未だそれなりの太さの流れをみせます。
登山路を逸れ、その流れに合うと最後の詰めに、さらに上に向かいます。
草付きの中、さらに上部へと延びているのが確認できます。
振り返れば正面に端正な祖父岳が、ほぼ同じ高さに見え、脇役的な存在となる黒部五郎岳も山頂部までを見せるようになりました。
見上げれば、源頭部の先に登山路があるようで、時折、そこを行き来するハイカーが見えるようになり、見下ろして右を見ると、先ほどまでいた乗越も少し低くなったようで、すいぶん高くまで来ました。
標高を上げるほど流れは細くなり、いよいよその場所が近づいたことを感じるようになります。
さらに流れをたどると、先日の雨のせいでしょうか最後の一滴はずいぶん太い一滴でしたが、これ以上の地点で流れは確認できず、ここが黒部川の最初の一滴地点に到着です。
これより上流に水流は確認できなかったので、これが今日の最初の一滴でした
太い流れのお陰で集水の手間が省け、これはこれで、ずいぶん助かりました。
メインの第2ラウンド
心配した天候も、やや雲は多いものの風もなくずいぶん穏やかで、見事な景観の中、今山行のメインイベントといえる『揖保乃糸』を、黒部川の最初の一滴をもって食することを達成したのでした。
こんな風景の中で食べる『揖保乃糸』に言葉はありません
もちろん、これまでで最高の味だったことは言うまでもなく、かつての針ノ木谷では、これ以上のシチュエーションで揖保乃糸を堪能した人は他にいないと自負しながら食したものですが、これをもって、自らがさらに至上の地で食した人になった気分です。
黒部川源流・源頭
この後には、さらに素晴らしいいくつもの景観にも出逢ったりして、この日の水晶小屋と翌日の雲ノ平山荘泊を経て、無事登山口でもあった折立登山口に下山しました。
鷲羽池で見上げる鷲羽岳
祖母岳までのルートはチングルマをはじめとした可愛い花園が広がる小径
お花畑の先に雲ノ平山荘と水晶岳
最終、第3ラウンドは遠くになりつつある雲ノ平の台形を見ながらでした
ごちそうさまでした
注;
ここでの『揖保乃糸』は、そこらのスーパーで販売されている赤帯のものでなく、一般的には贈答品としてしか扱われることのない黒帯の逸品であります
山行の記録は ヤマレコ で
黒部川源流域・池巡り は こちら
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