西の大峰山、修験道の山・板馬見山に笛石山を経由して行ってきました。
雨に降られた後山(板馬見山)山頂
千種へは元来、三室山に登るつもりで向かいました。
三室高原駐車場まで来てみたものの見上げる山頂部にはガスがかかっていて、とりあえず準備しかけると、あろうことか小粒ながら雨が降ってきた。
せっかくの遠路もこれでは台無しと感じたので、ここまでの道中でも見上げた、やや南に位置する後山なら雨に遭わずに行ってこれると考え、松の木橋の登山口まで戻ることにした。
三室山の登山口に車は2台だった。
ここ松ノ木橋の登山口にも3台しか停まっていない。
そもそも、あまり人気がないのか、それとも天気が良くなさそうなので、今日に限ってこうなのか・・・。
今になって過去の記録をたどってみると、ここから後山に上がったのは2001年春のことだから、恐ろしいほどの年月が経っていた。
ほぼ記憶にない感覚で、その際は松ノ木橋に駐車せず、林道をさらに奥へと乗り入れていたようで、当時、車は林道の終点まで入れたようだ。
林道起点の鳥居
これより西大峰
今は松の木橋に駐車して歩き出すのが、いかにもセオリーのようにみえたので、それに倣って歩き出す。
時刻は10時を回ってしまっていたので、ちょっといただけないところだが許してもらおう。
少し歩くと笛石山の登山口があった。
少し頼りなさも感じる笛石山への橋
これまでに後山には2度上がっているが笛石山を経由したことがなかったので、こちらに向かってやや頼りない橋を渡り山へと入る。
この橋は南プス・光岳の易老渡登山口の橋によく似ていると思って歩き出すと、針葉樹帯をジグザグに歩く登山路もよく似た様相だった。
植林帯の路を行く
小さな沢に沿ってしばらく歩くと、やがては沢を離れ尾根に向かって、やはりジグを切って歩く。
流石に南プスほど長く続くはずもないが、その様相を想い起させてくれる、なかなかの登山路。
尾根に乗るとやがて左手に広葉樹帯
千種川に沿って広がる千草や岩野辺の町並み
左手に自然林も現れだすと、千種川に沿った千種の町を所々で見下ろせるようになる。
左、猫石の標識に誘われるように向かうと、思った通り見晴らしの利く岩が猫石のよう。
見晴らしのいい猫石
千種の町並みは箱庭のようで、山並みは左端の植松山から右端の日名倉山までくっきりよく見える。
標高が足りないので遠望が利かないのは、ちょっと残念なところだった。
植松山の稜線
南望
志引峠へと続く谷と右端に日名倉山
笛石山には1時間ほどで到達した。
わずかに見える樹々の合間から北部を見ると、元来の目的地の三室山は山頂部がガスに覆われていた。
笛石山
北を見ると三室山にはガスが迫っていた・・・
雨にでも降られようものなら、「今日はここまで」でもよかったが、なんとか持ちそうな雰囲気と、お昼をするには適当な場所も見当たりそうにないので、これまでの時間経過も踏まえ、後山を目的地として先へと進む。
本日、唯一といえる岩場のトラロープ
そんな思いとは裏腹に、目的地までの具体的な前知識と言えば尾根を着実に歩けば県境尾根に出て、その後しばらくすれば山頂に着く、くらいで、それ以上のものはないままのハイク。
県境尾根までに展望のある場所でもあれば、そこを目的地として来た道を引き返すつもりでいたが、それらしき個所は見当たらず、引き返すにはその距離が延びるばかりだ。
時折山頂らしき高見が見えても、気持ちが折れるほど遠くて高いばかりに見えた。
誤算はこの尾根が思っていた以上に長かったことと、県境尾根近くに来て降り出した雨。
アップダウンを繰り返しながら歩を進めるうち、「これなら引き返すよりも山頂まで行ってしまった方が早そう。」と感じるようになり、天気はすぐれない中も山頂まで行くことにした。
板馬見渓谷からの一般道出合い
県境尾根までに沢からの一般コースや行者コースも合わせると山頂はそう遠くないように感じたが、辺りはすっかりガスの中で展望は全く得られず、少し前からは雨まで降りだして最悪のシチュエーション。
天から降る雨は、そう大したことはなかったが、足元の背の低い濡れたササにズボンのひざ下や靴は中までびしょ濡れになってしまった。
県境尾根では背丈のあるチシマザサが行く手をふさぐほどにまで伸びていて歩きづらい。
ここでも何度かアップダウンを経て、笛石山から1時間半ほど費やして、ようやく後山山頂に到着した。
県境のピークは往々にして色んな標柱が乱立する
もちろん人はいないし、展望も皆無。
雨をしのげるものは、自身のいつもの晴雨兼用傘、これのみ。
せっかくなので腰を下ろして行動食のみ摂った。
せめてもの救いは風がなかったことくらいか。
以前に訪ねた際の記憶では、この祠にはブルーシートが掛けられていて、目にするのは今回が初めてだった。
真新し気な花も供えてあるところを見ると、以前は開山前の時期だったのだろうか。
今日は、昨日までのとんでもない残暑から一転、一気に秋が来た。
さすがにこの標高で雨に打たれると、それなりの寒さも感じられ、長居することなく下山する。
往路で見た一般コースへと引き返す選択肢もあったが、うるさいチシマザサをかき分ける気力はなく、足元の濡れたササもきらって平成之大馬鹿門へのルートで下る。
二度目のはずのこのルートも、まったく記憶がなく、展望があればそれなりに楽しみながら歩けそうな中、濡れたササに十分気を遣いながら、足元をしっかり確認しながら慎重に下る。
しばらくして雨にあたらずに下れるようになったと思い振り返ると、山頂部だけにガスがかかり、今も同じように雨が降っているように見えた。
平成之大馬鹿門も二度目のはずだが、これもほぼ記憶にない。
平成之大馬鹿門
自身の記憶から遠くなるのは致し方のないところだが、今となれば、この石柱自体の世間の記憶も、どうも危うい気がした。
ここから渓谷沿いの登山口までのルートは、おそらくこの石柱が建った際、整備されたのだろうが、建立以来、それなりの年月を経た現在では、この石柱を目的に足を運ぶ人は、ほぼいないのではなかろうか。
マイナーなルートの笛石山からのルートでさえ、所々には真新しいピンクテープがあったのに、こちらのルートには当時、設置された壊れかけの標識はあってもピンクテープはほとんど見かけない。
植林帯のトラーバースでは道はか細い個所もあり、下りにあっても、やや登り気味の場所もあったりする。
小さな滝を見る場所では、その下部の小さなガレた沢を渡らなければならない所もある。
滝状に流れ落ちる小さな沢があった
さすがに不動の滝らしき滝では遊歩道的な木の階段が設置されていて、いかにも人工的な部分も見受けられたが、如何せん、これも十分に整備されているととは言い難く、足元は心もとない。
不動の滝
中央の奥に石仏が祀ってある
大馬鹿門からは次第に日も差しだして足元は決して悪くない条件下だったにもかかわらず、印象としては中々厳しいルートだった。
黒部の平の渡し近くにある避難小屋を彷彿とさせる建物
あとは渓流を見ながら下ればいい、と思っていたら、林道奥の登山口まではそう遠くなかったが、そこから今日の登山口の松ノ木橋までがとんでもなく遠かった。
林道から見上げる山頂部は未だガスがかかっていた
それもそのはず、登りで歩いた笛石山から県境尾根までの道のりを、この林道で歩かなければならないのだから、これも仕方ない。
笛石山から後山は、それほどに遠かった。
コンクリート製の林道を長々歩き、ようやく笛石山への橋が見えると、松ノ木橋はほんのすぐそこだった。
鳥居を抜けると、そこは板場見だ
結局、山中ではだれにも遭うことのない静けさこの上ない、言い換えれば心細さこの上ない今日のハイクだった。
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