初冬、振子山より振子沢上部の全容と東壁
朝、奥大山から望んだ大山は、昨日降った雪がわずかに山肌を白くしているものの、黒いところが目立ち、いつになく残雪は少ないようでした。
東壁と南壁を分けるキリン峠付近の三角地帯にも雪はほとんどありません。
歩き出しの健康の森では例年見られる雪の壁はなく、何の苦もなくその森の中へと足を踏み入れます。
森では色々な鳥のさえずりがあちこちから聞こえ、早春の日差しが残雪の上にブナの影を穏やかに映し出しています。
ところが、緩やかにに高度を上げ、鳥越峠とほぼ同じ高さになる頃、穏やかだった森の様子が様変わりしました。
ブナの大木が折れたり枝がちぎれたりしているのがあちらこちらで見られるようになったのです。
2、3日前に吹いた強風でやられたようですが、振り返ると何年か前の秋の台風の際にも大きな被害があったような気がします。
この辺りは峠越えをした風の通り道になっているのでしょうね。
おまけに残雪が少ないときていますから灌木の枝がかなりうるさく、次第に急になる傾斜のこともあって、ここで早々にスキーからアイゼン歩行に切り替えました。
藪を縫うように歩き着いた鳥越峠上部のコルでは、ブナの大木が幹の下部からへし折られているのを目の当たりし、風の威力を見せつけられました。
また、このような状況は峠の稜線の南斜面だけでなく、駒鳥小屋、地獄谷方面に広がるブナの大木の点在する北斜面ではさらにひどいものでした。
この斜面では滑りを楽しみにしていたのに、それどころか灌木の枝のムチ打ちを回避しながら滑るのが精一杯でした。
これまでの状況から考えて駒鳥小屋付近も残雪が多いはずはなく、案の定、地獄谷・本谷はすっかり水流が出て轟々と音を立てて流れています。
峠からはここまで下らずに本谷上部へと滑り下りる手もありましたが、ちょっと足を踏み入れてみると斜面がやや急だったことや、クラスト気味だったこともあり無難なルート取りとしました。
振子沢を歩くようになっても大きな水流が見えているのには少々の驚きとともに「源頭部に雪はあるのだろうか・・・?」と、一時はこんな心配もしました。
それほど融雪が早く、残雪量が少ないんです。
事実、少し登高したところでは板を脱ぎましたからね~。
その後も灌木や左右の尾根からの落石を避けながら登高します。
あまり良いことのなかったなかで東尾根中腹から流れ落ちる、この時期限定の小さな滝を見たことは新しい発見でした。
振子山方面からのデブリを乗り越すと、いよいよ振子沢源頭を見上げる場所です。
振り返れば烏ヶ山はずいぶん低くなり、見上げる正面には象ヶ鼻が見えます。
すでに山肌が露出している部分がかなりあり純白の振子沢ではありませんが、心配していた雪の少なさは問題なさそうです。
見上げれば、稜線上に何名かの人影と沢上部を登高する人が確認できます。
しばらくするとそのうちの一人でしょうか、スキーヤーが華麗に滑り降りてきました。
その様子からすると、雪は決して悪くなさそうですが・・・。
ひと頑張りした直上する谷の上部でアイゼン歩行に切り替え、さらに急斜面をもうひと頑張りすれば稜線に到着です。
「なんだ~、これは!?」
ようやく見えた北壁ですが、その姿には思いのほかがっかりさせられました。
残雪の少なさに加え、昨日までのひどい黄砂のせいでしょうか、なんだかへ~んなまだら模様なんですよ。
牛のホルスタインを想い浮かべてもらった上で、白いところをやや黄色くした感じとでもいいましょうか・・・。
先ほどまで横たわっていたホルスタインが起き上がってみると、胴体がずいぶん汚れていて、あまりきれいでなかった感じといいましょうか・・・。
昨日、パラ~っとまぶしたように降った雪だけが白くて、これまでの雪は黄砂混じりで黄色くて、おまけに岩肌が見えている部分もかなり多くて・・・。
いずれ、あまり良い姿には見えなかったんですよね。
三鈷峰方面の雪はないといってもいいくらいなく、到底、3月下旬の姿だとは思えないほど無残です。
見える風景にやや落胆しながらも小さな雪庇を風除けにして腹ごしらえしたら、滑降!
先に滑って行ったスキーヤーのあとは誰も滑らず、見える限り誰も確認できないので我々二人で貸し切りだ。 出だしの短い急斜面だけ気を付ければあとは快適~。
中間あたりの落石は厄介者だったけれど、それにさえ目をつむればあとは言うことはありまへん(せん)。
往路と同ルートで鳥越峠上部コルへ上がり、最後は木谷のツリーランを楽しみながら滑ると、環状道路はこれまでになくあっという間に着いてしまいました。
健康の森、 発:08時10分
振子沢源頭、着:12時30分
振子沢源頭、発:13時25分
健康の森、 着:15時50分
movie by ささやんさん
・・・つづきを見る