今回の香港訪問でもっとも訪れたかった場所のひとつ、大嶼山(Lantau Island)の北西に位置するいにしえの小さな漁村、大澳(Tai O)を午後から訪れました。
(画像の詳細はマウスポインタを画像上にあてると表示されます)
大澳(Tai O)への交通手段はいくつか考えられますが、今回は中環(Central District)から高速船に乗って大嶼山(Lantau Island)の南東に位置する梅窩(Mui Wo)に渡り、そこからはバスに乗って大澳(Tai O)へ向かいます。
滞在ホテルが九龍側なので、まずはスター・フェリーで香港島・中環(Central District)へ数分の船旅で渡ります。
梅窩(Mui Wo)行きの乗り場へはスター・フェリー乗り場の位置が海側に変わったお陰で短く歩けばすぐです。
街歩きの際にはデメリットが多い乗り場移転ですが、離島航路に乗り継ぐときには恩恵を受けることができます。
乗り込んだ高速船は船外へ出ることはできませんが、船内からでも車窓の景色を楽しめます。
窓越しなので風を感じることはできませんが、先ほど見たスター・フェリーからのものとはちょっとばかり違った角度から高層ビル群が見えるので、目の前に広がる光景は新鮮です。
なかでも九龍站(Kowloon Station)近くに建設中の高層ビルはかなりの高さで目を引きます。
ビクトリア・ハーバー内では低速走行だった船も湾外に出るとようやく高速走行するようになり、水上を飛ぶように走るようになります。
つい二日前に登ったばかりの大帽山(Tai Mo Shan)が工事中の斜帳橋の彼方にかすかに見えました。
しばらくすると背後に大東山(Sunset Peak)を主峰とするなだらかな大きな山々を従えた海辺の町が見え出すと、そこが梅窩(Mui Wo)。
上陸してまず驚かされたのは港の駐輪場に停められた、おびただしい数の自転車。整然と並べられている様が、余計に奇妙な光景に映りました。
数分の待ち合わせで乗車した大澳(Tai O)行きのバスは、曲がりくねった海辺の道路を日本では考えられないほどのスピードでビュンビュン飛ばして行きます。
いくら香港人がせっかちでも路線バスくらいはもう少しゆっくり走ってもらいたいものです。きっと途中のバス停に時刻表はないのでしょう。
おまけに路面がアスファルトではなくコンクリートなので乗り心地が悪く、決して快適とはいえないバスの旅です。
峠を越え、貝澳(Pui O)を過ぎると左手に長い砂浜が見えてきます。
長沙(Cheung Sha)。名前の通り、長いビーチが続いているのが見えます。
島の南側に広がるビーチは明るく開放的で、時間が許せばぜひ立ち寄りたい場所です。
石壁水塘(Shek Pik Reservoir )の堰堤上を走るようになると、少し前からちらちらとその山頂部を見せてくれていた大嶼山(Lantau Island)の最高峰、鳳凰山(Lantau Peak)の全容を右手、水源地の向こうに見ることができます。
鳳凰山(Lantau Peak)は香港全体でも大帽山(Tai Mo Shan)に次ぐ二位の標高を誇り、梅窩(Mui Wo)の背後に位置する同、三位の大東山(Sunset Peak)の女性的な山容とは対照的に、いかにも男性的な険しい姿で聳えています。
最高点は、ふたコブのうちの右側のピークです。
ピークの左手裾野に広がる高原状のところは昂坪(Ngong Ping)で、大仏の姿も小さいながら見ることができました。
反対側の海側には監獄があります。
ここは目の前に大海が広がり、背後には大きな堰堤と他の二方は険しい山や谷が迫って立地的に絶好の場所だったのでしょう。
囚人たちは日々この風景を見ながら何を想うのでしょうか・・・。
バスは右手に鳳凰山(Lantau Peak)や水源地を見ながらもうひとつ峠を越え、山腹に点在する寺院を見ながら下って行きます。
車窓に湿地帯を見るようになると間もなく目的地、終点の大澳(Tai O)に到着です。
梅窩(Mui Wo)では何人か乗車しましたが、大半が終点の大澳(Tai O)までに下車していたので、ここまで乗車していたのは自身ともう一人の二人だけでした。
到着したバスターミナルは想像以上に広く立派で、とても明るい感じがしましたが、往来する人の数は意外と少なく、同じ港町の西貢(Sai Kung)とならずいぶん違った印象でした。
先ほどまでいた香港となら雲泥の差で、高層ビルの代わりに山が見え、いかにも片田舎の風情で大きく空が広がっています。
神社の門前のような細い道端に乾物をずらり並べた通りを短く歩くと、大澳(Tai O)の観光名所ともいえる跳ね上げ橋に出ます。
小さな町なのでバス停から徒歩でもほんの数分のところなので助かります。
ここを訪れる人はこの橋を見ることが大きな目的のひとつですから小さな橋の上は人だかりで、なかでも現地の人たちに混じり西洋人の姿が多く目に付きます。
ちなみに、ここでは自身のほかに日本人らしき人を見かけることはありませんでした。
橋を渡るとこの町の小さなメイン・ストリート。
午後にもかかわらず、お店の軒先で魚貝を売る姿もあり活気があります。
突きあたりのT字路を左折し、のんびり歩きながら港の防波堤まで行ってみました。
イカの干物をハサミで細工して、あぶり焼きにしたものを売ってるおじさんや、外から丸見えの小さな家の中でジャラジャラと麻雀に興じる家族があるかと思えば、小さな工房のような薄暗い作業場で肉まんのような蒸しパンのような、何やら白い物をせっせと作って直売している人たちもいました。
仕事に励む人、余暇に浸る人。
いろんな人がいて、現地の人にとっては当たり前の日常が観光客のこちらにとっては見たことのない情景となって目に映り、短い道中のなかでも充分に目を楽しませてくれます。
防波堤ではのんびり釣りをする人もいます。
穏やかな海と柔らかく照り付ける太陽の光。いい休日の午後の景色が広がっていました。
先ほどのT字路まで戻りそのまま直進すると雰囲気が一変し、ひと昔前にタイムスリップした感の町並みの中を歩くようになります。
先の跳ね上げ橋とともに、大澳(Tai O)の見どころとなっている香港で今も唯一残る水上家屋の町並みです。
この町なかにある赤い小さな跳ね上げ橋を渡ったところで、ちょっと失礼して板張りのか細い通路を進み、奥の家の玄関先のような方へ歩いてみました。
すると、心なしか足元が不安定な気がして
「こんな不安定なところで、よく生活できるものなんだ。」
と思ったりもしましたが、通りに戻りずらりと並んだ玄関先だけを見てみると、日本の長屋の風景に見えなくもありませんでした。
香港では小さな船上で生活する人もいると聴きますから、まだ地に足が着いているここはそこに比べると少しはマシでしょうか。
いずれにしても海の上の桟敷のような場所に家を築き、古くからそこで生活してきたことを思えば、引き継がれてきたその生活スタイルは自身には想像することはできません。
もうひとつ大澳(Tai O)で忘れてならないのが夕陽の素晴らしいことです。
天気が悪かったり時季に恵まれなかったりすると、もちろん見ることはできませんが今日はすべてがそろったいいタイミングのようです。
跳ね上げ橋の上でその夕陽を見るべく、長らくねばって見ました。
太陽が低くなるにつれ辺りの情景は色彩豊かに変化し、時おり航行する小船が起こす波の軌跡も郷愁を誘います。
夕景はまことに素晴らしく、これまでに見たことのないほどの素晴らしい夕陽を香港のひなびた港町、大澳(Tai O)で見れて足を運んだ甲斐がありました。
ところが、夕陽をのんびり見たので帰路につくのが遅くなってしまいました。
当初、海上から夜景を眺められると考え往路と同じルートでホテルまで戻るつもりでしたが、ここはバスで東涌(Tung Chung)まで出て、そこからMTRで帰ることにします。
こうすれば東涌(Tung Chung)にさえ出れば、あとは列車に乗っていればいいからです。
満員のバスは例によって真っ暗な山道をビュンビュン飛ばして行きます。
どこを走っているのかよく分かりませんでしたが、ただ一箇所、監獄のある箇所だけは煌々と灯かりが点り、はっきりとそこだと分かりました。
長沙(Cheung Sha)で左折すると、今度はエンジンがこれまで以上にうなりを上げて、もっとも長く急な峠道を伯公※(※=土へんに幼)(Pak Kung Au)へ登って行きます。
峠では暗闇の中、鳳凰山(Lantau Peak)から大東山(Sunset Peak)へと歩いた際立ち寄ったバス停が、街路灯にほんのり照らされているのをわずかに目にして、とても懐かしく感じました。
峠道を直線的に下るようになると、正面に見えるようになった東涌(Tung Chung)へはもうしばらく。
バスは整然とした街なかを走るようになり、やがて東涌(Tung Chung)中心のバス・ターミナルに到着です。
MTRに乗り込み、ホテルに帰りついたのはちょうど20時でした。
ここからがハーバービュー・ルームのいいところ。
始まったばかりのシンフォニー・オブ・ライツを寛ぎながら見ることができます。何度見ても素晴らしいばかりです。
わずかな時間の移動で、いにしえのひなびた漁村の情景と世界に誇る摩天楼群が見せる素晴らしい夜景を見ることのできる街、香港(Hong Kong)。
大好きな街です。
◆ 機上から見た大嶼山(Lantau Island)や大澳(Tai O)
◆ みんなで香港に行ってきた
2009年1月6日
04/01/09 Tai O(大澳),Lantau Island(大嶼山)
登録:
コメントの投稿 (Atom)
1 件のコメント:
コメントを投稿