大美督(Tai Mei Tuk)の鏡のような水面の小さな池に
ガスに覆われた八仙嶺(Pat Sin Leng)が映っていた
天気に恵まれず展望は得られませんでしたが、香港にある太古からの自然を充分に感じられる、いい山歩きが出来ました。
昨日の南涌(Nam Chung)、鹿頸(Luk Keng)、新娘潭(Bride's Pool)トレックに続き、二日続きで大埔※(※は土へんに虚)(Tai Po Market)から新娘潭(Bride's Pool)に向かいます。
今日は山行の予定なのでできるだけ朝早くにホテルを出ようとしましたが、良いのか悪いのか朝食は豪華ビュッフェ付き。
つい時間が掛かってしまい、ホテルをあとにしたのは昨日とほぼ同じ10時頃になってしまいました。
登山口までの経路は昨日とほぼ同じなので、少しのんびり構えていても大丈夫でしょう。
大埔※(※は土へんに虚)(Tai Po Market)からは昨日とは違う手段で新娘潭(Bride's Pool)に向かうため、今日はミニバスに乗車します。
乗り場はバス乗り場とほとんど同じですが、ミニバス専用の乗り場です。
大埔※(※は土へんに虚)(Tai Po Market)のミニバス案内板
大埔(Tai Po)
すぐ目の前に20Cのミニバスが目に付いたので乗り込みます。オクトパスカードを清算機にピッとかざし料金先払いし、確認の意味で運転手や、すでに乗り込んでいる青年にこのバスの行き先を聴いてみまると・・・、同じ20Cのバスでもルートがいくつかあって、このバスはこれから行こうとしている新娘潭(Bride's Pool)まで行かないようなのです。
それでは困ります。
一度下車し、案内係らしき人に聴くと、確かに新娘潭(Bride's Pool)行きの乗り場は別にあり、その乗り場へと案内してくれました。
ただ、そのルートは本数があまりなく、次の出発時間までまだ1時間近くあるとのこと。
これでは時間が勿体ないので、いきなり山行ルートを変更して大美督(Tai Mei Tuk)から八仙嶺(Pat Sin Leng)を目指すことにします。
ちなみに昨日乗った275Rのバスは今日は平日のため運休のはずです。
そうこうしてるうち、先ほど、一度乗り込んでいたバスはすでに発車してしまいました。
こんな時もモーマンタイ。
案内係の人は次のバスにちゃんと案内してくれ、当たり前ですが料金はフリーで乗車させてくれました。
どこに行ってもいい人ばかりです。
小回りが利き目的地まで早く着くと思い乗り込んだミニバスでしたが、その小回りが利く優位性を活かし、意外や意外、町の中心部へと向かって行きます。
工業団地にもルートが設定されているので、ぐるぐると遠回りした格好で、むしろ、バスよりも余計に時間が掛かってしまいました。
昨日は通り過ぎた大美督(Tai Mei Tuk)が終点なので、ここで下車します。
足を下ろすと昨日、車中から感じたとおりいいところです。
ここは同じ香港の港のある風景でも、西貢(Sai Kung)や大澳(Tai O)とも違うし、同じリゾート地のような淺水彎(Repulse Bay)とも違います。
もちろん世界的な貿易港、ヴィクトリア・ハーバーと比べようものならなら、土俵がまったく違った感じで、到底、これが同じ香港の港であることなど想像だにできません。
とにかく絶対的な人の数が圧倒的に少なく、建物もせいぜい三階建てほどのものが点々とあるだけ。
空も大きく広がっていて、いかにも大陸的は風景に感じます。
大美督(Tai Mei Tuk)のバスターミナル
大美督村(Tai Mei Tuk Village)公所
ロケーションは絶好なのですが、心配なのは見るからに天気があまり良くなく八仙嶺(Pat Sin Leng)の稜線がガスに覆われてしまっていることです。昨日も一昨日も同じような天気でした。
朝は曇っていいて、このまま曇りや後に雨でも降るのかと思いきや、午後からは晴れたりする日本にはない変な天気で、今日もそうなってくれることを期待していますが、さてどうでしょう・・・。
とりあえず、すぐに雨が降るようなことはなさそうなので、出発です。
車道を短く歩いていると前方から歩道の上をロードバイクを押しながら歩いてくる人がいます。
日本では自転車の具合でも悪くなければこんなことはしませんからちょっと不思議な気がしましたが、道端の標識を見て理解できました。
どうも、この付近は急坂に加えカーブしているので、この何メートルかの区間は自転車は乗車して通行してはいけないようなのです。
意外と律儀なんですね。香港の人って。
標識は一人前の交通標識だったので案外、違反すると交通切符を切られるからかもしれませんが、もし日本にあったら守らないでしょうね~日本人は、このルール。
遊客中心(Visitor Center)脇の管理道路をほんの少し歩くと登山口がありました。
船灣郊野公園遊客中心((Plover Cove Visitor Center)
春風亭(Spring Breeze Pavillion)
すぐに春風亭(Spring Breeze Pavillion)をくぐると登山路は基本的に山腹をトラバースするように付けられています。新娘潭路(Bride's Pool Road)からのルートと合流する地点で、今日初めて先行グループに追いつきました。
三人グループの彼ら、どこかで会ったことがあると思ったら大埔※(※は土へんに虚)(Tai Po Market)から同じバスに乗り合わせ先に下車していた若者たちです。
すぐ前の席だったのでよく覚えています。
右手には時折、船灣水塘(Plover Cove Reservoir)が見える
T字路を左折し八仙嶺(Pat Sin Leng)へ向け急登
バスの中では何やらコンピューターのことでも話していたのでしょうか、終始にぎやかに話していましたが、ここでも話しが弾んでいるようで、一人の女性が歩きながらもずっとといっていいくらいおしゃべりしていました。おそらく話していたのは広東語でしょうから、時折耳にしたCPUやMICROSOFTといった英単語がかろうじて解るくらいで、それ以外は何を言っているのか、さっぱりわかりませんでしたけど・・・。
多分、コンピュータの話しをしてたんでしょうね。
広東語って、口調がまくしたてて喋る感じなので、街中のレストランなんかではすごくうるさくて、「何とかならないかな~」なんて思うこともしばしばありますが、こんなところで、それも若い人が話してるのを聞くと、意外とユーモラスで和んだ感じに聞こえて来るから不思議なもんです・・・。
仙姑峯(Hsien Ku Hung)
八仙嶺(Pat Sin Leng)のひとつ目のピーク、仙姑峯(Hsien Ku Hung)に達すると、大埔※(※は土へんに虚)(Tai Po Market)ではじめに乗りかけたミニバスに乗っていた青年に出会いました。あのルートでここに来る若い人は八仙嶺(Pat Sin Leng)に来る人が多いのでしょう。
山頂からは何も見えません・・・。
稜線に咲く花
八仙嶺(Pat Sin Leng)は名のとおり、八つの峯が連なっているのでこんな命名になったのでしょうが、八つの峯が連なっていると言っても実際に歩いてみると大した距離ではありません。多少のアップダウンはあるものの最東の仙姑峯(Hsien Ku Hung)から最西の純陽峯(Shun Yeung Hung)まででも35分ほどでした。
その西に位置するのが八仙嶺(Pat Sin Leng)山脈の最高峰、黄嶺(Wong Leng)です。
残念ながら、あいにくの天気で何も見えません。
八仙嶺(Pat Sin Leng)では連なる次の峯くらいはかろうじて見える時もありましたが、なだらかな地形のこの辺りは南側からガスが上がってきて、展望皆無です。
展望はありませんが、わずかながら縦走路からはずれたところに位置する黄嶺(Wong Leng)山頂は踏んできました。
山頂には例によって、香港のピークに立ててある太いコンクリート製の円柱がありました。
黄嶺(Wong Leng)山頂
屏風山(Ping Hung Shan)付近から黄嶺(Wong Leng)方面を見る
稜線の南側は鋭く切れ落ち、反対に北側は海までなだらかな尾根や谷が続いていることは地形図から安易に想像できますので、天気が良ければ屏風山(Ping Hung Shan)あたりが絶好のビューポイントでしょうね。屏風山(Ping Hung Shan)の西端付近で丹竹抗(Tan Chuk Hang)への分岐を左へルートをとると急な下り坂になります。
香港のトレイルでは急な勾配のあるトレイルはもちろん、緩く広いトレイルでも往々にしてコンクリートや大きな石を積み上げて整備されているトレイルが沢山あります。
でも、ここのトレイルは違います。
そのように整備されているのは八仙嶺(Pat Sin Leng)の稜線の一部だけで、ほとんどの部分が土や元来からの石や岩の上を歩けるのです。
ですから、ここのような、いかにも登山道らしい急な下りを香港で下るのは初めてのような気がしました。
しばらく歩くと川の源流部でしょうか、小さな沢が現れました。これも初めてのことです。
コンクリート製の小さな橋
澄んだ水
沢といっても日本のように絶えず流れているようではなく、降水後にのみ流れるように見えましたが、ここ数日は天気があまり良くないせいか、沢にはきれいな水がたまっていました。そこで、このきれいな水を見て、仙姑峯(Hsien Ku Hung)からほぼ同行だった例の青年に聴いてみました。
「この水、飲めますか?」
日本人とすれば、山中できれいな水を見れば、その水をためらいなく飲むことは何の抵抗もありませんが、彼=香港の人たちにとってそんなことは到底ありえない、びっくりしたような様子で返事が返ってきました。
「ダメ、ダメ!」
ところが変われば生活習慣はずいぶん違うものです。
『郷に入れば郷に従え』
もちろん口にしませんでした。
さらに急坂を下ると、これから下る池が右手に見えてきます。鶴藪水塘(Hok Tau reservoir)です。
ブーメランのような形をしているのですぐにそれと分かりました。
天気が良ければ、ここから見上げる屏風山(Ping Hung Shan)はさぞかし見栄えするだろうなと思っても、相変わらずのガスで展望はありません。
平山仔(Ping Shan Chai)方面を見下ろす
鶴藪水塘(Hok Tau Reservoir)池畔へ下山
あとは道なりに歩けば、そこへと導かれます。池畔の東屋でしばらく休んだら、彼と一緒に鶴藪(Hok Tau)方面に向かいます。
ここでも人影はまばらで、香港にいるとは信じられない風景が目の前にはあります。
水面や照葉樹を揺らす風が心地よく吹いています。
鶴藪水塘((Hok Tau Reservoir)
さらに九龍坑山(Cloudy Hill)を経て大埔※(※は土へんに虚)(Tai Po Market)まで行くという彼とは堰堤で別れ、その後も管理道路を下って行きます。あの三人組とも、いつの間にか別れ別れになってしまっていたのは、少し残念な気がしました。
鶴藪(Hok Tau)の野営地付近はこれまでの山中の光景にも増して、さらに香港らしからぬ場所でした。
辺りには家畜の飼料のようなにおいが漂い、野鳥の飼育をしているのか鳥の大きな鳴き声が聞こえてきます。
植物を栽培しながら鑑賞もできるラベンダー・ガーデンという観光植物園があり、付近では果物も栽培されているよかのような畑もみかれられました。
折からの悪天でガスが立ち込め、辺りが幻想的な雰囲気だったことが余計にらしからぬ場所と思わせたのでしょう。
ラベンダー・ガーデン
鶴藪圍(Hok Tau Wai)
鶴藪圍(Hok Tau Wai)でミニバスを待つうち、雨が降りだし、粉嶺(Fan Ling)に近づく頃にはすっかり本降りです。粉嶺(Fan Ling)でMTRに乗り換え深圳(Shenzhen Shi)方面からの来た列車に乗り込むと、大きな荷物を携えた人が目に着きます。
その多くは終点の紅磡(Hung Hom )まで乗車することなく、それまでの大埔※(※は土へんに虚)(Tai Po Market)や沙田(Sha Tin)、九龍塘(Kowloon Tong)で下車して行きました。
きっと、それらは下町で売るための商品だったのでしょう。
それぞれの地域での暮らしぶりを目の当たりすると、その都度、色んな事を感じずにはいられません。
九龍(Kowloon)に戻ると、そこは人であふれています。
きっとこの人たちも今日を生きるため頑張っているに違いありません。
ホテルにも今日を精いっぱい生きている人たちがいました。
前日の
南涌(Nam Chung)、鹿頸(Luk Keng)、新娘潭(Bride's Pool)トレックはこちら
アルバムはこちら
◆ みんなで香港に行ってきた
※参考コースタイム(基本的に休憩時間は含みません)
大美督(Tai Mei Tuk)=15min=船灣郊野公園遊客中心(Plover Cove Countory Park Visitor Center)
=40min=八仙嶺(Pat Sin Leng)自然教育径・T字路=20min=八仙嶺(Pat Sin Leng)・仙姑峯(Hsien Ku Hung)
=35min=八仙嶺(Pat Sin Leng)・純陽峯(Shun Yeung Hung)=35min=黄嶺(Wong Leng)
=30min=丹竹抗(Tan Chuk Hang)分岐=35min=平山仔(Ping Shan Chai)分岐
=5min=鶴藪水塘(Hok Tau Reservoir)池畔・東屋=45min=鶴藪圍(Hok Tau Wai)
※参考文献および地図
香港自然散策
郊區地圖(Countoryside Series)
新界東北及中部(North East & Central NT)
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